ケータイ小説 『肌』 著:マサキ
手をつないだ夜道。
予報では一晩中降ると言っていた雨もすっかり上がり、星がまたたいている。
4年ぶりに、夜空を綺麗だと感じた。
吸い込む夏の空気が、とても愛おしい。
マサキにはまだ言っていないけれど、このあと、出来上がった料理を食べつつ、報告したいと思っていることがひとつある。
何の目的もなく、ただやみくもに就活していたけど、これからはそれをやめる。
私は、自動車学校の求人を探して就職し、ゆくゆくは教習指導員になりたいと考えている。
教習指導員試験の倍率は50倍。
合格の可能性は30パーセントほどだと言われる難関だ。
運転技術と学科講義の試験に受からなくてはならないし、それだけでなく道路交通法について熟知し、指導員になるための面接に受からなければならない。
まず、教習所に就職し、そういった試験に受かってやっと教習指導員になれる。
教習指導員になれるまで、10年かかる人もいるそうだ。
マルチ商法の勧誘をしてきたヤマには「夢などない」とウソをついたけど、私にもたくさんの夢がある。
まず、教習所に就職すること。
教習指導員になり、優秀な生徒を世に送り出すこと。
みんな、最初は初心者。
車の免許を取った人も、最初は教習所で習ったことを頭におき気を引きしめて運転するけれど、そのうち周りのベテランに流されてしまう。
誤った運転を、平気でするようになってしまう。
それでは、いつまで経っても事故はなくならない。