キス・キス・キス
そうした村だから、男の子が産まれでもしたら大騒ぎになる。もう村を挙げてのお祭りが始まるぐらいだ。当然、その後も村民全員でバックアップして男児を大事に育てることになる。

村役場の正面玄関には大きな看板があり、いかなる女性も男性を傷つけてはならない。求められたら与えなければならない。どのような要求も断ってはならない。産めよ増やせよ村に男児を満ちさせよ!そんな時代錯誤も甚だしい掟が記されている。

かなわん…。

そして、私のクラスにいるこの男子、志村くんも大切に育てられたそのひとり。

この高校は各学年に一組しかクラスがない。生徒数が少ないから、それで事足りるのだけど、男子がいるのは、この二年一組だけ。つまり志村くん以外は全員女子。

そんな恵まれた環境なのに、なぜか志村くんは私としかキスをしない。

志村くんとの初めてのキスもこの教室だった。その時は彼も不慣れで歯と歯がぶつかる交通事故みたいなキス。だからそれがキスだと知ったのは後から。

二回目のキスは誰もいない学校の廊下。その時は鼻と鼻をぶつけてしまった。
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