「1/4の奇跡」左側の君に【完】
受付の真壁さんの元へ行った。
「あと、科学館を案内したら、
駐車場まで見送って終わりです」
そう伝えると、真壁さんは私の顔を覗き込んできた。
「花音ちゃん?」
「・・・はい?」
「大丈夫?」
「何が・・・ですか?大丈夫です」
私は、ふぅと深呼吸して子供たちを待った。
外の広場から、子供たちが入ってきて階段を上った。
私も科学館の中へ入って、展示物の説明をしたり、
質問に答えたりしていた。
時々、拓人と彼女が手話で話しているのを見かけて、
胸がチクっとした。
でも、仕事中。
笑顔で、わかりやすく丁寧にを心がけて、
ちゃんと最後まで案内した。
そのままバスの駐車場まで見送った。
真壁さんも一緒に来てくれた。
「ありがとうございました」
子供たちと先生たちから、手話と声で言われて、
私も覚えたての「ありがとう」の手話をした。
バスに乗っていくのを見上げて、
手を振り続けた。
大きく両手で振り続けた。
子供たちも手を振ってくれた。
先生も、彼女も、拓人も・・・
私は、笑った。
すっごい笑顔で笑った。
バスが動き出し、
見えなくなるまでずっと、大きく両手を振った。
見えなくなっても、
なぜだかその手を止めることができなかった。
振って振って振り続けて・・・
「花音ちゃん、戻ろうか」
真壁さんに腕を下ろされて、
私はその場に泣き崩れてしまった。