「1/4の奇跡」左側の君に【完】
思い出した・・・この・・
胸に痛みが走るぐらい、きゅんとする拓人のキス
柔らかく塞がれて、
苦しいほど、まさぐられる・・・・
やっと唇を解放されて、
拓人の胸におでこをあてた。
拓人は私の頭をぽんぽんと撫でた。
「じゃあ・・・行きますか」
・・・・?
「どこに?」
拓人を見上げると、優しく微笑んでいた。
「また殴られるぐらいの覚悟で行かないとな・・・
お父さんのところに」
「え・・お父さん?・・・またって?」
拓人は私の右手を繋いできた。
「話してみるよ・・・ちゃんと」
私の手を引いて駐車場の方へ歩き出した。
今から・・・お父さんに会いに行くの?
またって・・・どういうこと?
いろいろと考え事をしながら歩いていたら、
一台の四角いワンボックスカーのハザードがピカピカッと光り、
ロックが解除された。
「これ・・拓人の車?」
拓人は、わざとらしく助手席のドアを開けた。
「どうぞ」
なんだか・・・恥ずかしい。。。
「ど・・・どうも」
いつもお父さんの車に乗せてもらって通勤しているけど、
なんだか照れくさくて、いつも後部座席に乗っていた。
だから、助手席に乗るということがあまりなくて、
少し緊張していたら、
運転席に、ドカっと拓人が乗ってきた。
エンジンをかけると、
運転席がほんわりと明るくなって、
拓人は、メガネをかけた。
「・・・メガネかけてるの?」
拓人は自分の髪をくしゃくしゃっとした。
「運転の時だけ、かけてんだよ」
「そうなんだ・・・」
楕円形のフレームが、小さな顔をもっと小さく感じさせて、
ちょっと知的な感じで、よく似合っていた。
「メガネ・・・似合うね」
隣から覗き込むと、
私の目を左手で隠してきた。
「見んな。ほんと・・こっち見んな。
道案内しろ・・・・前見ろ・・前!」