『歩』〜人は愚か〜
いまでも、あの駆け寄った瞬間のことは良く覚えている

「なんで学校で言わなかったの?」

「なんで元気な振りしてたの?」

「なんで・・・・」

そう、なんで?を沢山私にいう担任は私が泣いていることに気づいてそっと抱き寄せてくれたっけ

そして・・・

「戻りなさい。きちんと泣いてもいいから座っていなさい」
少し抱き寄せた後に言って私の背中を押してくれた

外から見る母の遺影に私は戻る足を止めてしまった

そして、動くことも出来ず
声を張り上げて泣いた気がする

幼稚園児が迷子になって大声で泣くように
私も泣いた
誰の胸も借りず、ただ遺影の見えるその場所で

私は迷子になったのだろうか
それとも、もう進む道が見えないのだろうか

恐怖にも似たその現実をただ受け入れるには
私はまだ幼すぎて
兄の言葉をやはり理解するには私には感情読み取れなさ過ぎて
もう、眠ってしまいたい
お母さんより先に私が眠ってしまいたいと本気で思った

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