モラルハザード

「そうだ、杏子さん次は男の子だからな、もう間違えんといてくれよ」

お酒の入った義父はいつもよりも増して大きな声だった。

それに驚いて莉伊佐がちょっとべそをかいた。


「ほらほら、女の子は、すぐに泣くからいかんわ」

そんなに女の子を産んだことが不満なのか。

そしたらどうすればいい?

今からお腹に戻せばいいの?

私の顔が険しくなっていたのを察してか、私の母がとりなしに入った。

「ま、こればっかりは天からの授かりものですから、気長に待つしかありませんわ」

そんな母の言葉を瞬時で遮った。

「いやいや、お母さん、そんな悠著なことを言ってはいられませんよ。

うちの高畠家に嫁いだからには、何が何でも後継ぎを産んでもらわんと」


また始まった。

何かというと、高畠家の後継ぎの話になる。

その話になると、うちの両親は押し黙るしかなかった。
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