モラルハザード


ランチの帰り、マリッぺは向日葵のことを抱きしめた。

何度も抱いて、頬ずりして、向日葵の頬にキスをした。

それから、ベビーカーに向日葵を乗せて

今度は私を抱き寄せた。


「じゃあね、なみりん」


そう言って、くるっと背を向けて

一度も振り向くことなく人の波へと消えていった。


その姿をずっと目で追いながら

私は、もうマリッぺと会うことはないのだろうと、確信をした。


「ばいばい~、またね、またあしたね~」

マリッぺが消えた方向に、まだ手をふっている向日葵を見たら

涙がこぼれそうになったから、ベビーカの向きを思い切り変えて

反対の方向へ歩き出した。





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