モラルハザード
私とて、まさか自分が売れないお笑い芸人と結婚するなんて
夢にも思わなかったけど
会社の創立記念のパーティの余興に来ていた透と一緒に司会したことが
きっかけで知り合い
その後、猛烈なアタックに押し切られ、気がついたら斗夢がお腹にいた。
透の夢…それはさんまさんみたいな芸人になること…だけど
そんなことは夢のまた夢だというのを、私は薄々気が付いてる。
作り酒屋を透が継いで、社長夫人に収まるのも悪くはない。
だけど、兵庫の片田舎にひっこむのはまだまだ先。
私はまだこの東京の生活を楽しみたい。
そして、斗夢…この子には絶対に透のような人生を歩ませない。
出来うる限りの教育を受けさせて、安定した将来を歩んでほしい。
だから、私はプリスクールに斗夢を入れたのだ。