モラルハザード

だから、今、杏子が何を、奈美が何を、考えているのかわからない。

…いや、それは仲がよいと思っていたあの頃もそうだったのかもしれない。

どんな生い立ちがあり、どんな考えを持っているのかもわからないまま

私たちは、ママ友というくくりだけで安心し、密接な関係を築いてしまう。

そこに本当の友情など求めてはいけないのを、誰もがわかっているくせに

求めてしまうのだ。


みっこちゃんからメールが返ってきた。

『それはそうと、お教室の申し込みした?

私は一昨日、申し込みしたよ。

もう定員の半分はうまりました、って言われたから

真琴ちゃん、まだだったら急いだ方がいいよ』


それどころじゃないのに、指が勝手に返事をする。


『うわー、それは大変。二人目のこともあったりで、なんかバタバタしちゃってた。

今日は実家に遊びに行くから、帰ったら、申し込みをしておくよ』

送信してから、深いため息が出た。

明日のお金の心配をしているのに、こんなメールして、バカみたい…。


そんな私の思惑も知らず、横で、斗夢がプリスクールで覚えた手遊びをし始めた。

「上手だね…」

そう言って、斗夢の頭をなでると、にこっと笑って私の方を向いた。


でも…どうしても、この笑顔には、こたえてやりたい。

もちろん、それは、お腹の中の子どもにも…

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