求*幸福~愛しい人はママだった~【完】


彩乃が話を終えるまで黙っていようとは思っていたが、何か話せと言われても、今の俺にはかける言葉がなかった、紅茶をまた一口飲んだ彩乃がまた、話し出した。



「まだ…半年、です。事故の後、仕事につき、必死に娘を育て、生きてきました…今の私に…正直、どなたかと親しくなるとか、ましてや恋愛するなんて、思いもしないことです。」



「ですから…滝沢さんがメールをくださったり、今回のように誘って下さることが受け入れられないというか、まるで、別世界の出来事というか…戸惑うばかりなんです…」



夫の死後半年…娘を抱えての生活…見てもらいたいって自分の気持ちばかりで俺は…彩乃を苦しめてたんだと気がつき、なんとも言えないやりきれなさで一杯になった、俺でさえ、大学一年生で母親を病気で亡くしたとき、辛くて悲しくて、芝居に打ち込むことでそれから逃れようとしていた。



それが、一生を誓った夫だったら…





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