求*幸福~愛しい人はママだった~【完】



それからしばらく、人形を動かしている紗彩の不明な会話を聞いていた。



「翔哉…ありがとう…こちらでコーヒーどう?」



彩乃が優しい声で聞いてくれて、もちろん誘いに乗ってダイニングの椅子に座った。



「はい、どうぞ」と静かにテーブルにカップを置いてくれて、自分も俺の向かいに座った。



すると、紗彩が「まぁ~」と甘えたように膝に乗ろうとしていて、熱いコーヒーがかからないようにテーブルの中央に押し込み、嫌がらずに紗彩を抱きかかえる彩乃。



彩乃にとっての当たり前で普通の行動が、俺には愛情溢れる神々しいものに見えてくるから『恋心』とは面倒なものだ。



バクバクする胸を無理矢理押さえ込み、何でもないように「紗彩ちゃん、こっちにくるか?」と聞いたら無言で首を横に振られ、なんだかいわれのないショックを受けてしまった。





< 126 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop