【砂漠の星に見る夢】
即位式は神殿で戴冠式が行われ、その後、宮殿の大ホールで王族や家臣、そして海外の客人に向け披露宴が行われた。
披露宴でクフが黄金の玉座に腰を掛けると拍手と歓声が上がっていた。
そんなクフの姿を目の当たりにしたヘレスは感極まり涙を流し、メリタリスやヘヌットセンといった身分の高い妃たちの喜ぶ姿が見受けられた。
そんな中、妃の中でも身分が低いイシスは目立たぬよう後方で、まだ赤子である息子ジェドフラーと、ネフェルの忘れ形見・ヘムオンの世話をしつつ、玉座に座るクフを遠目に見守っていた。
無邪気に自分に甘える幼いヘムオンを見て優しく微笑した。
ネフェルが暗殺されたあと、身重のイシスはヘムオンを守ることに全力を注いだ。
ヘムオンはエジプト王室、最後の星信仰直径の王子。
ネフェルもメルサンクも他界した今、太陽信仰の勢力は留まることを知らず残された邪魔な一粒種を消そうとする不穏な動きが絶えず感じられた。