【砂漠の星に見る夢】

しかしイシスはクフとヘレスに、


「彼を亡くしてしまっては素晴らしいピラミッドを建造することはできなくなるでしょう」


と何度も訴え、その命を取り留めることができていた。


残された星信仰の一粒種がまだ存在している不安を蹴散らすかのように、太陽信仰は生まれてくる王子の名に『ラー』の称号をつけ、太陽信仰の権力を宮廷内外に大きくアピールした。


その為、イシスの息子は『ジェドフラー』と名付けられ、その後へヌットセンが生んだ息子たちも、カフラー、メンカウラー、と『ラー』の称号を与えられることとなった。


その名に表れているように王室内での星信仰の立場は地に落ちたも同然だった。


イシスはネフェルを亡くした悲しみに暮れながらも、ヘムオンとジェドフラーを育て、守ることで生きる意味を見つけ、宮殿に留まることを心に決めた。


そんな彼女の決意を肌で感じ取ったクフは、ようやく安心し、イシスの監禁生活を解き、両親とも自由に会えるように措置したのだった。



< 192 / 280 >

この作品をシェア

pagetop