【砂漠の星に見る夢】
うん、少しずつ生意気になって来ているこの弟が、こんな風に無邪気に家族旅行を喜ぶのも今年がギリギリのラインな気がする……。
何はともあれ憧れの海外旅行。
目に浮かぶは美しいマリンブルーに、心地良い風に揺れるヤシの木。
ココナッツにストローを挿して飲みながら、水平線を眺めるんだ。
妄想を広げてウットリと目を細めていると、
「それでね、お父さんはどうしても行きたい国があるんですって」
母がキッチンから顔を出して笑顔でそう告げた。
その言葉に私たちは、ピタリと動きを止める。
『どうしても行きたい所』
……それは容易に想像がついた。
「お父さん、それってもしかして……」
恐る恐る伺うと父は目をキラリと光らせ、
「エジプトに行こうと思うんだ」
と強い口調で膝をパンッと叩き、私たちは「やっぱりね」と顔を見合わせて、肩をすくめる。