Special
ふっと片側の口角だけを上げてソイツは笑った。
線が細い身体に、やけに似合う服装。
黒いベストから覗くピシッとアイロン掛けされた白いシャツに黒いネクタイ。
スカートじゃなくパンツってところがまた合ってると思った。
「…そっちこそ、“女がこんな仕事(こと)”って笑ったんじゃなくて?」
いつの間にか砕けた話し方をされても、全然違和感がなかった。
この店に来た時に目が合って以来、あまりコイツはオレを見ようとしない。
正確に言うなら、オレだけじゃなく普段からそうみたいだ。
今も視線を下に向けながらシェイカーを扱っている。
「―――名前は?」
「……真琴(まこと)」
コン、とそのシェイカーから手を離す細かな動作まで、オレは見入ってしまっていた。
白く細い手。
それがカウンターの少し落とされた照明に映えて、いつまでも見ていられるような気がした。
その日オレは、ただぽつりぽつりと会話をたまに交わすだけで朝の5時までそこで酒を飲み続けてた。
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