Special
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“あの日”から、オレは№1になった。
他の奴らから、憧れの瞳で見られて、中には敵対心を向けてくる奴もいて。
客(オンナ)も増えて、金も増えて。
―――だけど、それは大して嬉しいことではなかった。
むしろ、ずっと靄がかかったような…そんな晴れない気持ちがずっと続いている。
オレは、何の為に。
何を望んでココに立っていたんだ…?
「―――ちっ…!」
バァン! とロッカーについ当たる。
こういう気分の時に、やっぱりあそこに行きたくなる。
あの白い手から差し出される、あのジンを。
ふらりと街を歩いてあのバーへ向かう。
カラン、と同じ音を立てて店に入ると、いつもの場所にアイツの姿は見えなかった。
「いらっしゃいませ」
見たことはある男が口を開く。
ああ、休みか。
そんなことだけでこんなにイライラするのはなんなんだ。
「ビール」