Special

そんな一瞬の出来事に、あの真琴ですら何も言えずに至近距離のまま瞬きもせず瞳にオレを映し出していた。

オレもその距離を保ったまま、低い声で言う。


「やられっぱなしは主義じゃねぇ」


その言葉でようやく真琴も我に返って口を開いた。


「ちょ…っ、なにす…！」
「あ？　なにって同じことしただけだろーが」
「人がいるのに…！」
「案外カワイイ反応するんだな、真琴チャン」


オレがからかうように言うと、真琴が赤い顔でヒュっと手を振り上げた。
その腕が振り下ろされないうちにその手をまた拘束する。


「…一発殴らせろ！」
「うるせぇな…またその口塞いでやるぞ」
「！！」


初めて見る真琴の“女の顔”にオレは嬉しくなる。

きっと、今、オレは笑ってる。

ふと、そんなことを考えた時に、丁度真琴がオレに言った。


「なに一人で楽しそうに笑ってんのよっ」


んなこと言ったって。
しょーがねぇだろ。笑っちまうもんは。


「その原因は真琴（じぶん）だろ」
「は？　私？！」
「…オイ。他の男にも同じようなことしたら許さねぇからな」
「ホ、ホストがよく言うよ！」
「もうホストじゃねぇ」


オレが望むモン――――欲しいモン、見つけたんだから。