Special

すらりとした真琴でも、長身のオレ相手だと上目遣いになる程度の身長差がある。

そんな男に腕を掴まれても、強気な発言は健在の真琴を見たからか、男のスタッフはオレ達の間に入ることなくただその場に立っていた。


「“あんなこと”しといてその後追い払うってどんな神経してんだ、お前」
「別に? …№1にはあんなの、珍しいもんでもないでしょ」


オレの手を振りほどこうとするように真琴は体を捻らせる。
けど、オレはその手を離さなかった。


「オレはお前と違って、フツーの神経してんだよ」
「…っはは、№1になるくらいの人はフツーの神経してなさそうだけ…ど」
「№1、№1て、うるせぇんだよ」
「名誉なことでしょう? 何がイケナイの?」
「おめー…、オレが№1ってこと面白くねぇんだろ」


オレが真琴の腕を掴んでいるという態勢は変わらない。

けど、だんだんと内容がただの痴話ゲンカのようになってきたと感じたのか、スタッフは作業に戻り、気付けば客の談笑もまた聞こえてくるようになっていた。


「何が言いたいの…?」


真琴の顔が変わった。
核心を突かれているような、動揺するような、その揺らいだ瞳にオレは追い打ちを掛ける。


「オレは面白くないね」


その言葉に真琴はオレを見上げる。
次の瞬間、オレは空いてた片方の手を真琴の頭に回して噛みつくようなキスをしてやった。


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