彼の心は彼女のモノ
出会い

婚約者

「沙耶、今日お前の婚約者が来るぞ」
お父さんからの突然の告白。
「へ?」
意味が分からず硬直する。
「父さんの昔からの友人の息子と正式に婚約することになったんだ」
ポカーンと口を開ける間抜けな顔をする私。
こっ、婚約者ー?!?!?!
「待ってお父さん!
意味わかんないんだけど!」
甲高い声が部屋に響き渡る。
お父さんはふぅーとため息をつく。
「父さんと昔からの友人、真人と将来子供がそれぞれ男女だったら婚約させようと言ってたんんだ。
昨日、真人から電話があってな、今日来ると言ってるんだ」
んなもん知るかぁぁぁぁ!!! なんて言えっこないよね・・・。
とりあえず落ち着こう。
「いつ来るの?」
19時だ。とお父さんが静かに言う。
壁にかかっている時計に目をやると、現在18時。
やばっ! もうちょっとだよ!!!
「早く用意しろよ♪」
微笑みながら言うお父さんをキリッと睨む。
「もっと早く言ってよ!」
そう残して、自分の部屋に戻った。

神崎 沙耶
南ヶ丘高校の経営している跡取り娘。
因みに私は南ヶ丘高校の2年。
茶髪のロングヘアーに身長156の細身な体。
まぁ、こんな感じかな。
私は一人っ子だから、いずれお父さんの跡を継がないといけない。
生まれた時から決まってる私の人生。
大好きなお父さんとお母さんの悲しむ顔なんて見たくないから・・・
婚約でもなんでも笑顔で受け入れるよ。
それが、偽物の笑顔だけど・・・
婚約者が出来ちゃったら私は一生恋が出来ないんだろうなぁ。
ちょっぴり寂しいや。
そんな思いを振り切るように私は首を振った。
さて、早く用意しなきゃ!


自分の部屋に入ると、ベッドの上に淡いピンクの可愛いワンピースが置いてあった。
ワンピースの上にメモ用紙に綺麗な字で『これにお着替えください。 桜』と綴られていた。
さっそくワンピースに着替える。
着替え終わった時にコンコンッとドアをノックする音。
「どうぞー♪」
「失礼します。お嬢様」
ぺこりとお辞儀をして入ってくる桜さん。
桜さんは、メイドさん。
まぁ、私にとってはメイドさんっていうより友達に近い存在なんだけど。
「うん。
思っていた通り、お似合いです♪」
ニッコリと微笑む桜さん。
「そ、そうかなっ?」
照れくさくて頭をかいた。
「はい、とっても♪
お嬢様、髪をアレンジしてもよろしいですか?」
目を輝かせながら桜さんが言う。
「ん♪」
桜さんが用意してくれた椅子に座る。
そして数分後・・・
「できました♪」
桜さんが持ってきてくれた手鏡でチェックすると、長い茶髪が綺麗に巻かれていた。
わぁ!とつい声を上げる。
「ありがと! 桜さん」
桜さんは優しく微笑んで「いえいえ、それでは私はこれで失礼いたしますね」と残し、ぺこりとお辞儀をして部屋から出て行った。
よし、これで準備完了♪
ふと時に目をやると50分をさしている。
「やばっ!!!!!」
私はダッシュで部屋を出るのであった...


大きな扉の前で立ち止まる。
もう来てるのかな?
でも、まだ19時じゃないから大丈夫だよね?
あっ、でも時間より早く来る人もいるし...
どくんどくんと心臓が波打つ。
服装を直して、ふぅーと息を吐いた。
緊張して震える手で扉を開けた。
ギィーっと重い音が鳴る。
「おぉ♪
沙耶ちゃんの登場やぁ!」
入ったと同時に聞こえてきた声は・・・。
何故、関西弁?
声のした方に目をやると、そこには大柄なおじさん。
この人が、お父さんの友達?
と、後から「遅いぞ」とお父さんが言った。
壁にかかっている時計で時間を確認すると現在、18時55分。
間に合ってるよね?
私、全然間に合ってるよね??
むしろ、5分早いんだけど・・・
一人、心の中でツッコんでいると、お父さんが「まぁ、座れ」と言ったので、お父さんの横に座ることにした。
そういや、真人さん以外、誰も座っていない。
私が首を傾げていると、おじさんが笑った。
「息子たちは後から来るで♪」
とピースを作って。
「そうですか♪」
ニッコリと営業スマイルを作る。
「おぉ!
正平の娘とは思えんくらい、可愛い子やん!」
ニシシっと悪戯っぽく笑う真人さん。
「うるさい」
口の端を少し上げるお父さん。
お母さんは、クスクスと笑っている。
まぁこんな感じで会話が進んでいくのだった・・・


しばらく真人さんとお父さんの雑談を聞いていると突然プルルルと機械音が鳴り響いた。
真人さんがごそごそとポッケトを探って携帯を出す。
ほーいと真人さんの第一発言。
電話でほーいはないでしょ!!
と内心思ってると、真人さんは電話を切り、「もぉ着いたんやったってー」とニシシと笑いながら言う。
ドキッ。
どうしよ・・・
脳内がぐちゃぐちゃになったのを落ち着かせるため大きく深呼吸した。
きっと大丈夫だ・・・。
そして数分してから、ギィーと大きな扉が開いた。
扉の先に立っていたのは、顔立ちが良くてスタイル抜群のいわゆる「モテ男」。
「遅かったやん、宏太」
真人さんがひょいと片手を上げる。
「母さん待ってたんだけど、結局仕事入ったらしくてさ」
ばつが悪そうに顔を歪ませ、言う。
不意に視線が重なった。
「この子が、沙耶ちゃんやで!
めっちゃ可愛いやろー」
真人さんが、宏大くんを連れてきて、私の正面に向かって座る。
何で、正面に座らせるのよぉ・・・。
目が合っていた視線を耐え切れなくなって逸らす。
「そうだな」
お世辞でも、こんなカッコイイ人に言われたら嫌でも意識しちゃうじゃん。
もぉ絶対、私顔真っ赤だ。


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