逢いたくて

迷い

「咲?」

ひとしきり吐いたあと渉に呼ばれてトイレの戸を開けた

「大丈夫?」

「だめ…」

トイレの壁にもたれてぐったりする私の頭をポンとなでて渉も横に座った

「祝福してくれたよ。孫に会いたいって」

「……」

「ちびが生まれたら会いに行こう」

この子が生まれたらさよならするかも知れないんだよ…?

喉まで出かかったけど…言えなかった…

口にしたら現実になりそうで怖い…

「どうした?なんで泣いてる?どこか痛い?」

「…気持ち悪い」

「よしよし」

渉はそういって私の背中をさすったけど…

本当は心が痛んだ

赤ちゃんが…

ずっとお腹にいてくれたらいいのに…
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