逢いたくて
次に目覚めた時にはみなれた寝室にいた

渉がわがままを聞いてくれたんだ

「渉…」

「いるよ。目、覚めた?」

「ありがとう…」

「ここは院長の息子って特権を使わせてもらったよ」

渉は疲れた顔をしてる…

「ぎゅってして…」

「咲は甘えん坊だな」

そう言って笑う顔も疲れてる

私のせい

「よいしょ」

渉は私の腕につながる点滴に気をつけながら私の隣に横になった

「ぎゅっ」

「もっと」

「ぎゅ~」

「うっ」

「ははっ」

こんなやりとりにこのうえない幸せを感じる…

「まだ熱あるから無理するなよ?自宅での処置には時間がかかるかもしれない」

「うん」

なんで渉はいつもこうなんだろう

きっと気になるはず…

私の過去や恐れるものを

なのにそこに触れないでいてくれる

渉の優しさ?

私なら知りたくて聞いてしまうと思う…

「ちゃんと言うから…」

「ん?」

「全部言うから…」

「うん。」

「でも待っててくれる?」

「待ってるよ。俺達には時間がいっぱいあるしな」

微笑む渉の胸に顔をうめた

「酸素酸素」

そんな渉の焦りは関係ない

渉の温もりを感じたかった
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