付き合ってるのよ?
泣きそうだった。


涙をためて。


固く閉じられた唇は、少し震えていた気がする。


いつも、意地をはって、強がっている綾乃が今にも、泣きだしそうだった。


「どうかした?」


「あ……ううん。何でもないの!!」


綾乃は無理やり笑顔を作った。


眉毛を下げて、悲しそうに寂しそうに微笑んだ。


俺はバカだ。


綾乃が強がりなのを知っているくせに。


綾乃がけっして弱いところを、見せないのも知ってるくせに。


『どうかした?』なんて聞いても遠慮して、本当のことを言わないのも知っているくせに。


全部知っているくせに、綾乃に嘘をつかせてしまった。


姉さんにも腹が立つけど、自分に1番腹が立つ。


綾乃に罪悪感を感じさせてしまった自分に。


「ちょっと、ここで待ってて。……姉さん。少し来て」


俺は綾乃をおいて、姉さんとリビングに入った。






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