死神の嘲笑
悪戯っぽく、右の口角を上げる死神。

「墓地で、普通の人は寝ません。ですので、多分あなたが墓地で眠った二番目の人、だと言いたいんです」

「では、一番目の人は?」

朱理の質問に、死神は爪が鼻に当たる寸前のまま、自分を指差した。

「死神ナンバー七十四の墓石が完成した夜、私は泣きながら墓石に縋り付いたまま、泣き疲れて気付いたら朝だったんです」

ドームの壁に掛かる時計の長針は十二を、短針は六を指していた。

「そろそろ戻られたほうが良いのではありませんか? 皆さんが心配しているでしょう」

「はい」


ぐらり。

――立ちくらみだ。身体が、揺れる。

< 183 / 270 >

この作品をシェア

pagetop