ピアス
「目覚めたのね」
 女がお盆を持ちながら言った。やや色素の薄い黒髪。きりっとした眉。大きい目。卵形の顔は品のある美しさを演出していた。着物は淡い赤色の牡丹模様。




「君は?」クリフは言う。
「柚菜っていいます」
 クリフの前にお盆を置き、柚菜は正座をした。慣れたもの特有の所作をクリフは感じた。正面に柚菜を見据えた彼は、一瞬どきりとした。透き通った瞳に純粋さが表れていた。

「変わった名だね」
「あなたこそお名前は?」
「クリフだ」
「フフ、あなたこそ変わった名前」
 柚菜は手で口元を隠し笑った。
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