願い事、ひとつ

彼の潤んだ瞳と、目が合った。


息が止まる。


これは違う。これはさっきまであのひとの事を考えていたからで、決して私に向けられたものじゃない。
だから駄目。勘違いしちゃ駄目。期待しちゃ駄目。

必死に自分に言い聞かせても、もう体中が勝手に動き始める。

視界は歪み、喉からは嗚咽が漏れ、いつの間にか捕まれた腕は、彼の胸を必死で押す。



途方に暮れた私を抱きしめて、彼はついに私の名前を呼ぶ。



その瞬間。

私は、最後の願いが絶たれた音を聞いた。