子犬系男子
昼休みは全然休めなかったし教室に戻れば質問攻めだし、本当に七瀬くんと関わるとろくなことがない。

私の周りに集まっている女子たちを掻き分けて沙有里ちゃんがやってきた。

「みんな!もう昼休み終わったし授業始まるよ!質問はこの後の休み時間に!ね!!」

沙有里ちゃんの言葉に女子たちは渋々席に戻って行った。

沙有里ちゃんよ、ありがとう。

「愁ちゃん、私にも後で詳しく!教えてね!!」

「うん…」

全然食べられなかったお弁当箱を片付けて、私も自分の席についた。







授業が終わって私の周りには再び女子が集まった。

次から次へとくる質問を曖昧に受け流し、沙有里ちゃんと女子トイレに逃げ込んだ。

「愁ちゃん!本当に七瀬くんのこと何も知らないの?」

「え…何、芸能人とかなの?」

「さすがに芸能人ではないけど…」

「で?七瀬くんって何なの?何であんなに有名人なの?」

私の真面目な質問に少し間をおいて沙有里ちゃんが答えた。

「バスケ部のエース!」

…うん、で?

「バスケ部のエースなんだよ!」

「…え、それだけ?」

「そ、それだけって…!愁ちゃん、バスケ部のイケメンエースってもの凄く有名じゃない!!」

「全然わかんない…」

「愁ちゃんは周りに興味なさすぎ!!」

そんなこと言われても興味ないものは興味ないし…。

「うちの学校のバスケ部、七瀬くんが入ってからすごいんだよ!これまではそこそこの実績だったけど、七瀬くんが入ってからはぐっと良くなったみたい!!」

「へぇ…七瀬くんってすごいんだねー…」

ただの頭が残念なワンコではなかったということか…。

「へぇって…愁ちゃんは凄い人から告白されちゃったってことなんだよ!!」

「でも私からみた七瀬くんはバスケ部のイケメンエースじゃなくて、ただの犬なんだよね」

「い…!?犬!?」

沙有里ちゃんのびっくりした顔、面白い。

「もうちょっとでHR始まるし、教室に戻ろう、沙有里ちゃん」

「あ!ちょっと待って愁ちゃん!!犬ってどういう…」

沙有里ちゃんの言葉を遮って、教室に向かうため足を進めた。







教室へ戻るとすぐHRが始まろうとしていた。

「明日は体育祭の練習がある!水分補給は忘れずに、各自、飲み物を用意しておくこと、以上だ!」

先生からの連絡を聞いて、クラスの学級委員が号令をかけ、さようならの挨拶をして学校が終わった。

挨拶が終わると私はすぐさま鞄を持って席を立つ。

女子からの質問攻めから逃げるため、七瀬くんから逃げるためである。

女子から無事逃げ切り、あとは靴を履き替えて帰るだけ…!というところで、後ろから誰かに抱きしめられた。
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