理想恋愛屋

1.降臨!?

 晴れたこの暖かい春のとある日。

 今日も平和だな、なんてふかふかの椅子にもたれかかってコーヒーに口をつける。

 まだこのときは知る由もなかった。


 巻き込まれる騒がしい日常に。



「いーやーだーっ!!」

 廊下から響く女の子の声。

オフィス専用の小さなビルだから、それはとても目立っていた。


次第に足音が近づいてくる。

 ワンフロアには3つしか部屋がないから、どうしようもないくらい嫌な予感がするんだ。

こういうときに限って、あたるんだよな。


 コンコン。


扉がノックされて、オレはごくりとつばを飲んだ。


ピッと襟を直して、スーツの上着にハリを持たせる。


「どうぞ」

 オレの声とともに扉が開かれる。

「失礼します」

 そういって丁寧な挨拶とともに現れたのは、スーツ姿の爽やかな青年。


 同い年くらいだろうか?


「ここ、『恋愛屋』さんでいいんですよね?」

 この部屋にはいって驚いていた彼は、不思議そうに尋ねてきた。

決まってこういうときは、ニコリと微笑むオレ。

「ええ、そうですよ。どうぞ?」

 完璧にキメた営業スマイル。



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