理想恋愛屋

3.串刺しボイス

「ほらーっ、早く早く!」

 グイグイと腕を引っ張られ、その進む迫力といったらスゴイなんてもんじゃない。

 周りの人も一度振り返ってみてる。


 は、恥ずかしい……っ!

 もちろんそんなオレの小さな恥じらいなんて、これっぽっちも気にかけてもらえるわけなかった。


 彼女は細い体の線を強調するような少し肩の開いたタイトなシャツに、デニムのミニスカートを着こなしている。

シンプルだけど、それが彼女の魅力を引き立たせているのかもしれない。



 今日は、デートだ!

 まさか年下の女の子から誘われるなんて思わなかったけど、そこは大人のオトコとして、ニヤつくわけにはいかない。

だからといって張り切らないのも失礼なので、スリムジーンズにTシャツ、カジュアルジャケットというシンプルかつ無難にキめてきた。


 そんなオレに、前に前にと突き進んでいた彼女が振り向く。

「なにニヤついてんのよ、気持ち悪い」


 き、キモ……っ!?

コホンと咳払いをして、照れてるんだと解釈してやって気をとり直す。



 はしゃいで園内を歩く姿は、彼女もそこは華の女子高生。

こーんな性格だけど、ちらりと見え隠れするかわいらしい一面はだれも否定できないはずだ。


 朝、開場と同時に入場できるようにと車で連れてこられ、正直オレの体はへとへとだ。

 このために休みの日だと言うのに朝五時起きなんだから。



「あ、あれあれ!」

 アトラクションを指差し楽しそうに振り向く彼女は、今日の天気みたいにまぶしい。


 ……だが、しかし。

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