似非恋愛 +えせらぶ+

「昨日、慰められなくてごめんね」
「ん?」

 斗真が隣に座った私の髪の毛を弄ぶ。さりげなく、私を引き寄せている。気恥ずかしくなって目を伏せる私は、どこの少女かとも思う。

 こんな状況にだって、慣れきった大人の女なのだというのに。
 酸いも甘いも、経験してきた大人の女だというのに。

「ほら、昨日は……しなかったじゃない」

 斗真は私を見て、目を瞬かせた。

「なんだ、そんなこと気にしてたのか」

 斗真が笑う。

「安心しろ。俺は、お前と話できるだけで癒されてる」
「え?」
「こうやって、隣にいるだけで癒されてるよ」

 斗真の信じられないような言葉に私は目を丸くした。

「そんな……本当に?」
「そりゃ、一緒に育った幼馴染だろ?」

 斗真の一言に、雷に打たれたかのような衝撃を覚える。

「そう、だね」

 幼馴染、それが私達の関係。
 偽物の、恋愛関係をこじらせた私達の本当の関係。

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