似非恋愛 ＋えせらぶ＋

　そこで一息ついて、私はスマホを手に取った。新着メールのインフォメーションが出ていたので、何気なくメールボックスを開いた。

【送信者：飯山真治】

　その名前を見た瞬間、何とも言えない感覚が心臓を掴んだ。粘着質の触手が、私の心を押しつぶして電流をあてたみたいだ。
　ぎゅっと締め付けられるような息苦しさに顔が歪む。手が、震えた。

　……今更、何の用なの……。

　私はそっと目を閉じた。そして深く息を吸って、吐く。
　そして意を決して、思い切り顔をしかめながらもメールを開いた。

【会いたい。いつ、時間取れる？】

　メールを読んだ瞬間、私の心が冷える。そして激しく後悔した。
　仕事中にスマホなんか開くんじゃなかった。まだ、何時間も会社にいなくちゃいけないのに。
　私はこみあがってくる涙を必死にこらえた。何事もなかったふりをして。震える手でスマホを胸に押し当てた。

　私は平気。大丈夫。真治のことなんか知らない。何ともない。