似非恋愛 +えせらぶ+


 そんなことをぐるぐると考えていると、トイレにみあが入ってきた。私を見るなり、心配そうに声をかけてきた。

「香璃さん、大丈夫ですか? 体調でも……」

 駄目だ。

「ねえ、どういうこと?」

 気づけば、我慢できずに私はひどくきつい言葉を投げかけていた。
 自分でも驚くくらい、低く、冷たい声が出た。

「木戸さんと、付き合ってるの?」
「え? いえ、木戸さんとは……」

 みあが、そんな私の様子に当惑しているのがわかる。それでも、追及が止められなかった。

「みあには氷田君がいるわよね? ねぇ、どういうこと?」

 皆まで言わさず、私はみあに罵倒を浴びせる。

「あんたが二股するような最低女だったなんて、見損なったわ」
「香璃さん……っ」

 はた目にも、みあの顔が真っ青になった。
 それでも、止められなかった。

 私は、可愛い後輩を追い詰める。
< 66 / 243 >

この作品をシェア

pagetop