秘密な関係
遅いからって安達くんの車で家まで送ってもらったんだけど

結局、車を降りるまで一度も安達くんの顔を見れなかった

安達くんも何も話さないし、私だって話しかけられても何て答えればいいのか解らない

お礼だけ言って直ぐに自分の部屋に向かう

エレベーターで六階までの距離がめちゃくちゃ長く感じた

部屋に入ると電気もつけずにリビングのソファーに座り込む

ベランダから見えるどこにでもあるような街並みの夜景

エレベーターから一番遠い角部屋とこのお愛想にも素敵とは言えない景観に惹かれ私はこの部屋を借りたんだ

今、解った気がする

きっと、こんな気持ちの時は綺麗な夜景を見るより

これくらいがちょうどいいんだね

あまり明るくない街並みの夜景は素直に涙を溢させてくれる

私の目からいくつもの涙がこぼれ落ちていた

私は拭うこともせず、ベランダの先に見える夜景を見つめ続けた
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