恋人達の時間

「どうして欲しい?」



少しだけ上げた語尾と
口元だけに浮かべた
余裕の笑みが憎らしい。
本当は全部わかっているくせに。



「どうすれば、いい?」



ん・・・もう!
そんなこと、わかっているくせに。



「教えてくれないか?」



吐息まで感じるほど
顔を近づけた俊哉は
意地悪く微笑む。



「教えてくれ・・・詩織」



私がどうして欲しいかなんて
私の名を甘く呼ぶその声が
私を見つめるその瞳のが
全部お見通しだと告げている。



「あなたが好きなの」
「だから?」
「だから・・・愛して」


「詩織」



眼鏡を外したその手に引かれて
ふわりと抱きしめられる。
言葉の代わりにくちづけて 
貴方の熱を私に吹き込む。
その大きい掌は
優しく包み込むように
肌に触れるのに
指先は艶かしくうごめいて・・・
伏目がちに私を見つめる視線は
甘やかに艶を帯び
しなやかで弾力のある四肢が
悩ましく私に絡む。
貴方の体の全てが
言葉より雄弁に私への愛を語る。
あなたに愛されている事を実感する至福の時。



ーー快感ーー



髪の一本でさえ 
細胞のひとつさえ
取り残す事無く与えて欲しい。



だから・・・何度でも私は言う。
あなたが好き、と。



fin.
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