大人的恋愛事情 SS
 
家に帰り着いても、私はその腕を離さなかった。


玄関で鍵を開けている間も、靴を脱ぐ間も腕を離さない私に、やっぱり呆れたように笑う藤井祥悟。


心地いい気分でその腕に引かれるままリビングに入ると、そこには白い箱が置いてあって。


「え?」


思わず絡ませた腕をそのままに、隣の藤井祥悟を見上げると、私を見ている熱いのか冷たいのかわからない視線。


「おめでとう」


「え? どうして……」


知ってたの?


唖然と腕を絡ませたまま、藤井祥悟を見上げていると微かに笑う。


「昨日、室長に教えられた」


室長って?


パーフェクトでもなかった氷室室長の事?


「そうなの?」


驚いて聞く私を、ケーキの置かれるテーブルまで連れて行き、自分はコートを脱ぎ出す。


「エレベーターで偶然会った時に、明日は繭の誕生日のはずだから、ちゃんと祝ってやれって言われたよ。つーか、何で言わねえんだ?」
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