あの夏で





「はい?」



ピクッと内藤さんの眉毛が動いた。



「どうして…ゆうきと別れたかわからないの…。どうして…なんだろうね…」




「なんですか…それ…。そんな気持ちの先生に、あたし…絶対に負けませんから。1回ふられたけど、絶対に負けませんから」




「………………」




なんで内藤さんはこんなに強いんだろう?




「失礼しました」




内藤さんが保健室から出て行った。




内藤さんは1回ふられたって言ってたよね…。




あたしはゆうきに嫌われたくなくて、ゆうきに好きでいてほしくて、ゆうきに愛されたくて。




あたしは内藤さんみたいに強くなくて、自分の感情を出せなくて、ただ逃げただけ。




あたしは、なんて卑怯で最低な人間なんだろう…。




あたしは声をおさえながら、涙を流した。







< 116 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop