あの夏で
「そう…。あたしは屋上好きよ。空が近いもの」
「空?…あぁ。空、好きだったっけ?」
「えぇ。いつも空を撮っていたの、覚えてくれてたのね」
「うん…」
“覚えているよ。みなみのことなんだから。”
そう言おうとしたけど、やめた。
今は困らせるだけだから。
沈黙が続いて、みなみはその沈黙に耐えれなかったのか。
「それじゃあ、あたしは保健室に戻るわね。あ、ちゃんと授業サボらないこと」
「はい…」
そう言ってみなみは屋上から出て行った。
「みなみ…、好きだ…」
小さな呟きが、空に届いた。