雨降る中で
「知恵昼行こう」



クラスが離れたせいか遥人は最近よく私の教室に来るようになった


桜の席を見ると既に教室には居ない


「…うん」


お弁当の準備をしている知恵を遥人は優しく廊下で見ていた



ふと、遥人が教室を見渡すと後ろの席に男女10人ぐらいのグループの中に知恵を優しくみつめる男子が居た



あいつって転校生…?



遥人と目が合った祐介は気まずそうに目を逸らした


「何でいつもここなの?」


遥人は中庭のベンチに座った


遥人と2人でお昼を食べるときは周りの視線が気になり、いつも人があまり来ない中庭にしてしまう


「別に静かで落ち着くし…」



「…そう言えば、知恵のクラスの転校生イケメンだな」


私は遥の口から、あいつの話を聞くなんて思ってもみなかった


「...そう?」


「俺らのクラスでも噂になってた」


「ふーん、遥はファン減っちゃって寂しいね」


「俺は知恵が居ればいいよ」


「…」


冗談ぽく言う遥の一言に何も言えなかった


隣を見るとお弁当を食べ終わった遥は眠そうにウトウトしている


遥と付き合えば私はきっと幸せだと思う反面、中2の私がそれをさせない


「あっ!」


私の大きな声に遥がビックリして起きた


「何?どうした?」


「ごめん今日、日直でお昼呼ばれてるんだった」


「一緒に行こうか?」


私はお弁当箱を片付け大丈夫とだけ言い職員室へ走った



「あと少しなのに…」


遥が私の背中に呟いた声にも気付かない


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