焼け木杭に火はつくか?

(11)

「じゃあ、みんなも一緒に考えてよ」

地団太を踏んで駄々をこねる子どものように、知恵を貸せと英吾はねだった。

「どう言えば、秋ちゃん帰ってくるか、みんなも考えてっ」

オレ、ずっと一人で頑張ったもんっ
そう言って、秋穂を連れ戻すアイデアを何か出せと、英吾は訴えた。

「最終の新幹線で大阪行って、秋ちゃんに会って、また最終の新幹線で戻ってきて。ずっと、そうしてきたんだからね、オレ」
「で、そのまま仕事行ってたもんな、英吾」
「だよ。サトルさんだけだよ、心配してくれたの」
「まあ、おニブの二人は気づいてなかったから、しゃーないべ」
「ホントにニブいよね。大阪土産の肉まん、何度も食べてるじゃん、良ちゃんも、社長も」

なんで、それで気付かないんだよと頬を膨らませる英吾に、夏海は「大阪土産だなんて、あんた一言も言わなかったでしょ」と反論したが、道代から「英吾くん。大阪行くといつも買ってきてくれるのよ」と言う解説付きの肉まんを昼食に出されて食べた記憶がある良太郎は、母上、言ってくれよとその胸中で喚きながら、ばつの悪い思いで鼻の頭を掻いた。
< 195 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop