焼け木杭に火はつくか?
「秋穂ちゃんに電話。留守電にメッセージの残してんじゃね? ケーキ屋さん、朝五時から仕事なんだってさ」

ど真ん中の的を得た答えをあっさりと投げて寄越す聡に、夏海はまた盛大なため息を吐きこぼした。
そんな夏海をよそに、良太郎と聡は事の成り行きを楽しんでいた。

「仲直りして、お店じゃないんだけどなあ。ま、この際、そんな順番はどうでもいいか。結果オーライってことで」
「どっちにしても覚悟決めるしかねえべ、夏海さん。秋穂ちゃん、帰ってきて嘘でしたなんて訳にはいかねーべよ」
「あんなんだけど、英吾にマジで大阪に行かれたら、夏海さんだって困るでしょ」
「長谷さん、いい男だから長谷さん目当てで店に来る客もいるんだとさ。他の女に持ってかれたら悔しいべ」
「そうそう。決めるときにはバシッと決めるのが、夏海さんのカッコイイとこじゃないですか。押し掛け女房っていうのもありなんじゃないですか、夏海さんなら」
「……あんたたちも、いっぺん、その首へしおってやる?」

忌々しげにそんなことを言いながらも、夏海のその声はいつになくしおらしく、その頬にはアルコールのせいではないと判る朱色が浮かんでいる。
楽しげに揺れている英吾の背中と、頭を抱えるようにしてカウンターに突っ伏している夏海を見ながら、聡と良太郎は笑いあった。


(了)
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