焼け木杭に火はつくか?
良太郎は、料理はもちろんのこと、自分の部屋の掃除や洗濯物の片付けすらも、今までロクにしたことがないような、そんな甘えたな息子だった。
そういった一切合切を、全て母親に丸投げしていたような息子だった。
そんな息子が、親元を離れ一人暮らしなどしたら、瞬く間に足の踏み場もないゴミ溜めと化した部屋で、餓死しているかもしれない。
料理など作れなくても、電子レンジで温めるだけで食べられものが溢れかえっているこの時代に、本気でそんなことを考えて、息子の身を案じたのだ。
そんな母親に根負けして、結局のところ、大学から程近い場所にある学生専用の賄いつき門限ありの寮で、自由があるのかないのか判らないような生活を送ることになった。

良太郎自身も、もともと夜遊びがしたくて家を出たかったわけではないので、最初のうちこそは、少し早いかなと思っていた門限も、すぐに気にならなくなった。
門限があっても、消灯時間があるわけではない。
割り当てられた部屋は八畳ほどの部屋だったが、一人部屋ということもあり、夜遅くまでゲームをしていようが、テレビを見ていようが、誰にも咎められず、自由だった。
一人っ子故、部屋で一人で過ごす時間は、良太郎には慣れ親しんできた日常だった。
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