焼け木杭に火はつくか?
夏海に「修行になる」と言われたときは、そんな気になった。
やってみるかと、うっかり調子づいてのせられた。
自分の短編に対しては、読者がブログなどで酷評していることは知っていたし、気にもなっていた。
正直、それを目にするたびに、悔しいと思う気持ちも湧いた。
事の始まりは、賞金目当てなどという不純な動機だったかもしれない。
最初は作家という自覚もないまま、なんとなく始まって続いていくうちに、これを仕事にしていくのだという決意が生まれてきた。
今は生涯続けていくと仕事だと、そう覚悟を決めている。
心血注いで生み出した物語には、愛着だって愛情だって、もちろんあるのだ。

『つまらない』

そんな一言で、ばっさりと切り捨てられたくはなかった。
だからこそ、夏海が放った『修行』という言葉に、つい乗り気になってしまったのだが、そんな良太郎を見て、目を三角にして笑っていた夏海の顔に、また口車に乗せられたのだと後悔したが、全て後の祭りだった。
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