焼け木杭に火はつくか?
夏の暑い日。汗だくになって良太郎たちが駆けずり回って遊んでいると「おい。アイスがあるぞ」「スイカを切ったぞ」と、源次郎はよくドウダンツツジの垣根越しにそう声をかけてきた。
その言葉に、良太郎たちは歓声をあげて、源次郎の家の縁側に集まったものだった。
源次郎の家は、昔ながらの平屋の日本家屋だった。
家そのものは小さいが、いつもピカピカに磨き上げられた日当たりのよい縁側には、良太郎たちはもとより、近所の大人たちもよく集まっていた。
源次郎の家は、そんな思い出が詰まっている家だった。

「そうだ。お祖父ちゃんの本の整理、頼んでもいい。時間があるときでいいから片付けてくれないかしら」
「処分するってこと?」
「任せるわ。お祖父ちゃんったら、床でもどこでも、手当たり次第に本の山作っちゃうんだもの。残しておくにしても整理してちゃんと棚に並べたほうがいいでしょう」

道代の言葉に良太郎はそうだねと頷いた。
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