焼け木杭に火はつくか?
「判った。時間みて少しずつやるよ」
「お願いね。……ねえ。この人、知ってる?」

一枚の写真を手にした道代が、首を傾げ眉を寄せ、少しだけ険しい顔で良太郎にその写真を手渡した。

「このあたりの人じゃないわよね。母さん、見たことないもの」
「俺も、知らないなあ」

小学校二年生か、三年生の頃だろうか。
そのくらいの年のころと思われるランドセルを背負った英吾と、英吾と顔を合わせるように膝を折り、何か話しかけている女性がその写真に写っていた。
女性の横顔は笑っていたが、英吾の顔には何の表情も浮かんでいなかった。
場所は、英吾の家の近く公園。おそらく、そこに何かの写真を撮りに行った源次郎が、偶然にも撮ったものだろう。
全く見たことのない女性だった。
道代の記憶にもないということは、この団地の住人ではないのだろう。

「道でも聞かれたんじゃねえの。ここって、慣れてない人は迷子になりやすいからさ」
「そう、ね」

良太郎の言葉に頷きながらも、それでも、道代はその写真を思案顔で眺め続けていた。
何がそんな気にかかるのだろうかと、良太郎は道代に尋ねてみようとしたとき、良太郎の携帯電話が鳴った。
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