焼け木杭に火はつくか?
その洋館は、良太郎が子どものころは写真館だった。
元から写真館だったわけではないらしいが、その前がなんだったのかは、洋館の今現在のオーナー、聡にもそれは判らないらしい。
良太郎にも英吾にも、この洋館が写真館だったころに、七五三の写真を撮りにきた記憶があった。

『どうせなら、一緒に撮りに行きましょう』

道代のそんな提案で、良太郎と英吾は二人で写真を撮ることになった。
着慣れない着物に、借りてきた猫のように大人しくなっていた二人は、写真館で顔を合わせるなりはしゃぎだし、最後に二人揃っての写真を撮ろうとしたら、着物などめちゃくちゃになるほど暴れ回ってしまったらしい。
ボロボロの姿で、二人肩を並べるようにして床にペタリと座り込み、道代に叱られてべそを掻いている写真と、してやったりとでも言いたげな腕白小僧の笑顔を浮かべている写真が今も残されていた。
しかし、七年前ほどに店主が病に倒れて亡くなり、それとともに写真館は閉館した。
その後、しばらくの間は、土地と家屋を相続した、隣市に住む長男が掃除をしにきたりしていたが、いつの間にか売りに出していたらしい。
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