紺碧の海 金色の砂漠
急いで隣のヴィラに戻るべく、階段を足早に下りる。

芝の上を小走りに横切り、あとはプールサイドを通り抜けたら、先ほどの南国の花が咲き乱れる通路にたどり着く。あの場所まで行けば、眠れなくて散歩していました、という言い訳が通用するだろう。


プールサイドは平坦で何もなかった。

舞が駆け出したその時、建物との間に植えられた生け垣がガサッと揺れた!


ハッとして振り返った瞬間、舞は身体が大きく振られ――
 
踏ん張るために足を開くが、間の悪いことに舞が足をついたところはプールの縁。見事、ツルンと滑って真夜中のプールに飛び込みそうになる!


(う……うそっ!!)


派手な水音がしたら、全員が起き出してくるだろう。

寝ぼけていたみたいで、気がついたらプールに飛び込んじゃいました。なんて言い訳が通用するだろうか? と真剣に考えてみる。

だが、いつまで経っても水に落ちる気配はない。

それは誰かが、アバヤ越しに舞の腰を支えてくれたおかげだった。


そのままグッと引き起こされ、傾いた身体はプールサイドで真っ直ぐになる。


「あ、ありがとうございます。寝ぼけてて……」

「まったく、あなたというお方は。真夜中にアバヤ姿で水泳ですか? この間のビキニは、こういう時のために着るものだとご存知でしょうか?」


舞が礼を言いながら顔を上げると、眉間にシワを寄せたヤイーシュが睨んでいたのだった。


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