紺碧の海 金色の砂漠
『珍しいことだ。シーク・ミシュアルが女性に呆けるとは』
コンベンションセンター内の特別室に入り、国王同士の語らいということで人払いがされた。
すると、途端にレイが笑いながら年下の旧友を揶揄する。
『失礼な言い草だな。私は呆けてなどおらん!』
レイは含み笑いをしながら、コーヒーポットからカップに黒い液体を注ぎ込む。
どうやらこの国のコーヒーはセルフサービスらしい。国王に至るまで自分で注ぐというのだから、徹底していると言うべきか。
『給仕くらいつけてはどうだ? とても国王の仕事とは思えんな』
余計なこととは思いつつ、ついつい口に出てしまう。
一方、レイは変わらない笑顔で、不遜な友人の前にコーヒーカップを置いた。
『大した仕事ではないさ。妻と一緒に料理を作ることもある。君には考えられないだろうが、この国では普通のことだ』
その言葉に、ミシュアルは金色の髪をした美しい王妃の姿を思い出した。
確かに、華やかで人目を惹く女性には違いない。だが残念なことに、ミシュアルの記憶の中には十年前の記事が残っていた。
それも、彼女の夫以外が目にするべきでない写真と共に……。
コンベンションセンター内の特別室に入り、国王同士の語らいということで人払いがされた。
すると、途端にレイが笑いながら年下の旧友を揶揄する。
『失礼な言い草だな。私は呆けてなどおらん!』
レイは含み笑いをしながら、コーヒーポットからカップに黒い液体を注ぎ込む。
どうやらこの国のコーヒーはセルフサービスらしい。国王に至るまで自分で注ぐというのだから、徹底していると言うべきか。
『給仕くらいつけてはどうだ? とても国王の仕事とは思えんな』
余計なこととは思いつつ、ついつい口に出てしまう。
一方、レイは変わらない笑顔で、不遜な友人の前にコーヒーカップを置いた。
『大した仕事ではないさ。妻と一緒に料理を作ることもある。君には考えられないだろうが、この国では普通のことだ』
その言葉に、ミシュアルは金色の髪をした美しい王妃の姿を思い出した。
確かに、華やかで人目を惹く女性には違いない。だが残念なことに、ミシュアルの記憶の中には十年前の記事が残っていた。
それも、彼女の夫以外が目にするべきでない写真と共に……。