紺碧の海 金色の砂漠

(13)真夜中の訪問者

(13)真夜中の訪問者



室内のカーテンが風になびいた。吹き込んだ海風はどこか生暖かく、室内の温度はわずかだが上昇する。

その部屋の中央にベッドがあった。

窓際にある大きなソファは、ミシュアル国王が氷を使って舞に悪戯した場所である。ベッドサイドのポールハンガーにはアバヤがかけられ――。


そこは、舞の滞在するヴィラで間違いなかった。

ベッドは素朴な木を組み合わせた天蓋で囲まれている。目の粗いカーテンが下がっており、侵入者のひとりがカーテンをつかむと力任せに引き千切った。


『我らは“愛国の戦士”である! 日本人女は先代国王を誑かして、尊きクアルン王家の血を汚した。それだけにとどまらず、新たな女を送り込み、正妃の座まで得ようとは。我らはこれ以上、不浄な血が混じった王は認めぬ。外国人の血は力によって排除する! イン・シャー・アッラー』


男はアラビア語で叫ぶと、ベッドの中央に横たわる人物に向かって、小ぶりのジャンビーアを振り下ろした。

本来なら拳銃を使いたかったのだろうが、今のアズウォルドは特別に警戒が厳しい。お守り代わりのジャンビーアを持ち込むのが精一杯であろう。


ジャンビーアを突き立てる寸前――。


薄い掛け布の下から男は腹を蹴り上げられ、もんどり打って後ろに倒れた。

侵入者たちの顔色が一瞬で変わる。


『やれやれ、あまりに遅いので本当に寝てしまうところだった』

『なっ! 貴様は……』


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