紺碧の海 金色の砂漠
黙り込むヤイーシュに向かって男は挑発的な言葉を口にする。


『雑種というのは、生命力だけは旺盛でたちが悪い。車を爆破して死んだと思ったのに、まんまと生き残りおって』

『あれしきで死ぬ者などおらぬ。かすり傷だ』


ヤイーシュは腕組みをして侵入者たちを見据えた。

バストバンドは装着せず、骨折などなかったかのように振る舞う。弱みを見せては終わりだ。それは砂漠で生きる野生動物のような本能だった。

男は悔しそうに、


『どうせ王に異国の女を娶るよう、そそのかしたのも貴様らであろう』

『何を馬鹿な。王の婚約は十五年も前に決まったことではないか。当時は王弟殿下の第一王子であられたが。王はアッラーの誓いを守られただけだ!』

『欺瞞にすぎぬ! ラフマーン国のサディーク王子まで利用して、日本人女を正妃につけるとは。あの日本人女を生かしておくと、いずれ我が国の資源は日本に吸い尽くされるのだ!』


そう叫ぶと、男たちは一斉にヤイーシュに斬りかかった。

だが戦闘には適さない室内である。ヤイーシュは最初にかかってきた数人を叩き伏せ、次にリーダー格の男を捕まえた。そのまま、彼らへの盾にする。


『騒ぐな! 庭を見てみるがいい』


次の瞬間、庭からヴィラの建物に向かってライトが照射された。


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