紺碧の海 金色の砂漠
「いや、気持ちはわかるけど……わたしは信じてないから。誰になんと言われても、アルの死体をこの目で見るまで、死んだなんてゼッタイに信じない!」


キッパリと言い切る舞をシャムスは唖然とした顔で見上げている。


そして、シャムスは悲しげに微笑むと、小さく首を振ったのだ。


「アーイシャ様には報告いたしませんでしたが、私の旦那さま……ターヒルさまは反日組織に味方し、暴動を企てた首謀者として指名手配されたのです」

「なっ!? なんなのよ、それはっ!」


それは、いきなりの出来事だったという。

ターヒルは自身の部下からもたらされた情報に、妻を連れて飛行機で国境沿いの町に移動した。そこで馬を調達。

シャムスも気づかぬうちに、ターヒルはラフマーン王国のサディーク王子と連絡を取り合っていたらしい。

砂漠の国境を少し越えたところでサディーク王子一行と落ち合った。


そしてターヒルは、シャムスをサディーク王子に預け、自分は首都に戻ったのだった。


「どうして? 指名手配されてるのに……」

「陛下から、不在中はご両親様とラシード様ご一家をお守りするように、そう言われているから、と」

「ば……」


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