紺碧の海 金色の砂漠
それはヘリの音だった。

舞の後方から飛んできたらしい。スコールの音に紛れてすぐ近くにくるまで全く気づかなかった。

白い機体、扉の部分には紺碧のアズウォルド国旗。それは紛れもなくアズウォルドの王室ヘリだ。

目にした瞬間、舞の胸は激しく鼓動を刻む。
 

(まさか……アルが戻ってきてくれた?)


ビーチパラソルから少し離れた砂浜にヘリは着陸する。

そして唐突にドアが開き、姿を見せたのは――レイ国王だった。

彼は焦った様子で、舞に何か言いたそうにしている。


期待はあっという間に消え去り、舞の心は谷底へと突き落とされ……。
 

そのとき、レイ国王を突き飛ばす勢いで、誰かがヘリから飛び出してきた。
 


ヘリのプロペラは回ったままだ。風が砂塵を巻き上げ、背後の海を消し去った。そこに、金色の砂漠の幻影が浮かぶ。

その中を、白いトーブをはためかせ、舞に向かって駆け寄る男がひとり。

まるで映画のワンシーンのように……。


それは、いつかの公園と重なり、舞は搾り出すような声を出した。


「……アル……」


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